温水洗浄便座の発祥は、米国そしてスイスと言われています。1964年には、伊奈製陶(現、株式会社LIXIL)がスイス製クロス・オ・マットを、東洋陶器(現、TOTO株式会社)が米国製ウォッシュエアシートをそれぞれ輸入販売を開始しました。それから3年という歳月を経て、伊奈製陶が国産初の温水洗浄機能付便座「サニタリーナ61」を発売。その後、東洋陶器も国産化に成功し、1987年に松下電工(現、パナソニック株式会社)が参入するまでの間、この2社が市場をシェアしてきました。
 90年代に入り、タンクレス便器が発売されてから、トイレは新しい機能が次々と生み出され、清潔性を売りにした抗菌仕様や節水性を売りにした洗浄方式など、メーカー各社が競い合いながらトイレの性能は飛躍的に向上し続けてきました。
 そして2016年。温水洗浄便座の一般家庭普及率はついに80%超となり、水洗化された家庭ではほぼ普及した状況となっています。温水洗浄便座の国産化から50年。あらゆる面で機能向上が実践されてきたトイレは、さらなる進化を遂げています。トイレは汚れるもの。では、汚れない、汚さないトイレとは? メーカー各社の挑戦は続きます。

伊奈製陶(現LIXIL)が1967年に発売した国産初の温水洗浄機能付便座「サニタリーナ61」
※LIXILホームページより

 温水洗浄便座の普及が進むほど、トイレの品質への要求は高まってきています。特に、『嫌いな家事』で第2位のトイレ掃除(SUUMOジャーナル調べ)の負担軽減は、もはや必須条件。近年、メーカー各社では、お掃除のしやすいデザインや構造を追求し、新しい機能が生み出されています。
 まず注目したいのが、「汚れにくい」という性能。言うまでもなく、汚れにくければその分お掃除の負担は少なくなります。
 そこでメーカー各社では、便器の素材そのものを汚れにくくさせる研究が重ねられてきました。汚物が付着しにくい素材であることはもちろん、使っていくうちに汚れが落ちにくくなる原因である水アカが固着しにくい素材にも着目され、便器に新しい素材や加工技術が採用されています。TOTO、LIXILが創業よりこだわってきた陶器製の便器に、汚れを防ぐ新しい加工技術を施しているのに対して、パナソニックでは、水族館の水槽や航空機の窓などにも使われている有機ガラス系の新素材を採用するなど、メーカー各社で「汚れない」トイレが実現されています。
 また、汚れた時のお掃除のしやすさという観点からは、便座の構造を工夫して、隙間や手の届かない場所を排除した設計が施されています。つなぎ目やフチの裏側などの見えないところをなくし、汚れが溜まりやすい部分をなくしたデザインや、便器と便座の間の拭き掃除がしにくい部分まで手が届くようにした構造設計など、お掃除をしやすくする様々なアイデアも生まれ、お掃除の負担軽減に役立っています。
 汚れの吸着を防ぐ便器の効果をさらに高める新技術も開発されています。表面がツルツルの便器に、使用する前にミストの水を吹き付け、より高い清掃性能を発揮させるなど、お掃除の負担を極限まで軽減させる、あくなき探求が続いています。

 パナソニックでは、汚れるのは便器の内側だけではなく、トイレの床や壁などへも飛びはねることを考え、便器の外側に汚れを漏れ出さない発想で細部までこだわった構造を実現しています。それが、「トリプル汚れガード」という、パナソニックオリジナルの新しいアイデアです。  男性の場合、トイレ使用時に一番の汚れの原因となるのが「ハネ」。ここに着目したのが、水面に泡を溜めることによって泡のクッションをつくり、ハネを防止する「ハネガード」です。また、立ってした時に、もし便器のフチにあたってしまった場合、外側に垂れ出るのを防ぐ「タレガード」は、便器のフチを約3ミリほど立ち上げただけ。シンプルですが、これまで誰も気が付かなかったポイントと言えます。さらに、座ってした時のことまで考えたのが「モレガード」。便器と便座の形状を工夫して、巧みなデザインの組み合わせによって外への漏れ出しを抑えたものです。大がかりな装置を備えることなく、柔軟な発想と緻密な設計で実現させたアイデアの賜物です。

  言うまでもなく、トイレの基本は洗浄力。節水効果を高めて、洗浄に使う水の量を減らした結果、洗浄力が低下しては本末転倒と言えます。そこは各社とも当然の使命として、節水効果とともに洗浄力の向上にもこだわっています。少ない水でもしっかり流せる水流の工夫など、従来より70%前後の節水効果を発揮しながらも、かつてないほどの洗浄力を実現しています。